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株式会社ミロク情報サービス
「導入して初めてわかったワークフローの長所
J-SOX法への対応がもたらしたより良い業務プロセスと効率化」
J-SOX法では、IT業務統制の要件として、「インプット」「プロセス」「アウトプット」「マスター」「アクセス・セキュリティ」「リスク」について、その正確性、網羅性、正当性、維持継続性、準拠性、機密性をアプリケーションで担保することが求められている。ミロク情報サービスでは、会計業務に自社製品のMJSLINKを導入していたが、この要件を満たすために、統合ERPパッケージ「Galileopt(ガリレオプト)」の導入を決定した。ワークフロー導入に不安を感じていた経理部門も、実際に稼動して、その便利さを実感しているという。
●ERPパッケージ導入を契機にシステム統合を実施
会計ソフトベンダーとしてJ-SOX法対応を啓蒙してきた同社は、同時に社内会計システムの内部統制対応の見直しを進めていた。見えてきたのは、プロセス管理のためのワークフローと、それに連動した自動仕訳機能、アクセス管理のためのログ記録機能など、大きな機能の新規導入の必要性だ。そして、従来のMJSLINKでは対応できないと判断し、Galileoptの導入を決めた。さらに導入時には、現行システムも見直した。「電話番号管理や社宅賃貸管理、請求書支払管理など、MJSLINKではカバーできなかった機能を外付けのサブシステムとして実装していたので、内部統制の観点から見ると、あまり良くない状況でした。Galileopt導入を機会にこうしたサブシステムも取り込み、マスターも含めた一元管理の実現も導入プロジェクトの目的となりました」と、移行プロジェクトのリーダーを務めた開発・サポート本部R&Dセンター部長の櫻井氏は語る。「当社は年商200億円の規模で、Galileoptのメインとするマーケットだった。ミロクを仮想顧客に見立てて、導入時に起こりうる問題や課題を知り、今後の開発と顧客サポートに活かすために、情報システム部門だけでなく、ユーザーである経理部門、さらに製品開発部門、CS部門からもプロジェクトメンバーを出しました」(櫻井氏)。社内ユーザーならではの率直で厳しい意見は参考になったという。
●システム設計時の重視ポイントが科目体系からフローと権限へ
プロジェクトの開始は2007年7月。2ヶ月で要求事項を整理した後、年末までにワークフローの構築とサブシステムの取り込みについて検討し、年明けから開発とデータコンバート作業に取り掛かった。当初の目標は2008年4月のカットオーバーだったが、同時進行の業務システム開発とシングルサインオン機能の調整に若干手間取り、2008年7月のカットオーバーとなった。最も時間をかけたのは、ワークフローの申請書式および承認ルートの決定と、誰にどの処理を許可するかという、権限の決定だった。「従来、会計システムの仕様決定に一番時間を要したのは科目体系の設定でしたが、それがワークフローの導入と権限の設定に変わった。結局、何よりも重要なのは、仕事のやり方を見直すことだと実感しました」(櫻井氏)。一方、ユーザーの立場で導入にかかわった経営管理本部 経理・財務部部長の佐藤氏は、「本音を言えば、今、動いているシステムを入れ替えるのは気が重かった」と当時を振り返る。導入前には、経理部が中心となって運用マニュアルを作成し、全国の拠点で説明会を実施した。「最初は漠然として不安でしたが、マニュアル作成を通じて何がわからないのかがはっきりした。IT用語は無論のこと、ワークフローや権限、承認ルートのイメージがつかなかった」(佐藤氏)。ユーザーのこうした戸惑いは、CS部門や開発部門にとって貴重な情報となった。
●一ワークフロー導入で従来の業務手順の煩雑さに気づく
当初考えたワークフローを導入してみると、実際はあまりにも煩雑で仕事にならず、業務フローや承認ルートを全面的に見直した部分もある。「従来の承認フローでは、紙の伝票を上長が承認してから担当者が入力し、その入力と仕訳を再度上長が承認するという二重承認が必要でした。一方、申請書の入力をそのまま自動仕訳できるGalileoptなら、最初の入力のあとは担当者による改ざんは不可能なので上長承認は一度で済み、内部統制の要件を満たしつつ、業務プロセス自体を簡略化できる。『申請書のデータが会計データとして流れる』というワークフローの特性が、ここで活きるのだと納得しました」(佐藤氏)。Galileopt導入前の佐藤氏の不安は、「とにかく便利になった」という評価に変わった。「最初の申請書入力だけで、あとは全てシステム上でデータが流れるので、途中で再入力したり、検証する手間がなくなった。また、申請書も全てデータとして保存されており、どこまで入力したか、どこまで承認されたかを簡単に閲覧できます」(佐藤氏)。一般社員の経費申請も、その後のワークフローを各自で確認できる。「業務上、出張が多いのですが、旅費精算状況や入金予定を簡単に閲覧できるので、自分の財布の資金繰りが楽になりました」(櫻井氏)。外部への支払いもワークフローで対応するため、支払日に関する問い合わせには担当者が自ら回答できる。また、月次決算後に手作業で行っていた会計データの報告も、BIを通してリアルタイムで提供されるので、経理部の業務負担は大きく軽減した。
●ワークフローの入力データを活かした新たな分析手法を模索
現在、Galileoptのユーザー企業の約7割がワークフローを導入しており、「予想を大きく上回る導入率は、J-SOX法対応や内部統制への関心の高さの現れだと思う」と櫻井氏は見る。J-SOX法の詳細が明らかになるのに合わせて、Galileoptは300項目以上の機能を追加している。プラットフォームであるデータベースエンジンには、アイエニウェアのSQL Anywhere 9を採用。「DBログ管理や暗号化など、J-SOX対応に必要な機能を全て満たしているので、MJSLINKから引き続き、プラットフォームとして採用しています。安定した動作はもちろん、OEM用カスタムインストーラーなど、パッケージプラットフォームとしても使いやすく、満足しています」と櫻井氏は評価する。次の展開として、銀行からの入金業務のワークフロー化による自動仕訳機能の採用を検討中だ。「さらに、ワークフローで入力したデータをデータベースとして有効活用したい。例えば、ある物品の取引履歴を検索し、過去の見積価格や取引数を参照できれば、適正な価格で物品購入ができる。また、重複購入へのアラート機能があれば、ムダも防げます」と佐藤氏はアイデアを語る。「J-SOX対応は、会社の規模に応じてできるところからシステムを導入すればいい。当社のユーザー企業の皆さんも無理のない範囲で少しずつ始めています」(櫻井氏)。ミロク情報サービスでは、業種・業態に応じた最適なシステム導入のためのコンサルティングを行っている。こうしたサービスを利用して、今からでもJ-SOX法対応を進めていくことが、内部統制の実現には必要だ。
ワークフローと会計がシームレスに連動する統合ERP
Galileoptは、データエントリー、ワークフロー、BIなどのフロントエンド系モジュールと、財務大将、人事給与大将、販売大将をはじめとする定評あるMJSのパッケージ群、さらに資産管理、債務債権管理モジュールなどを統合した統合ERPパッケージ。ワークフローからの入力で自動仕訳を実現する財務会計システムとの連動性の高さは、MJSLINKシリーズで培った会計パッケージベンダーならではの特徴であり、経理担当者の業務を大幅に軽減する。また、建設業向けの「Galileopt工事大将」など、業界特有の会計処理に対応した業種別ソリューション展開にも注力している。BIによりワークフローの未決済データや未集計の会計データを引き出して手元で集計し、参照できるのも特徴だ。通常のERPパッケージでは、データウェアハウスに格納されるデータは月次、週次などの締め日で集計したデータだが、Galileoptではリアルタイムにデータを抽出し分析するので、経営状況を自由に可視化し、近未来を予測しながら、迅速な意思決定ができる。
株式会社ミロク情報サービス
代表取締役社長 是枝周樹
TEL: 03-5361-6369
東京都新宿区四谷4-29-1
http://www.mjs.co.jp
税理士、公認会計士およびその顧問先企業をマーケットに、財務会計パッケージを中心に、人事給与、販売管理などのトータルソリューションおよびコンサルティングを提供する。代表的製品は、今回紹介する「Galileopt」のほか、中小企業向け財務会計システム「MJSLINKⅡ」、会計事務所向け統合システム「ACELINK Navi」などがある。