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東芝電材マーケティング株式会社 (株式会社インテ・クレッセ)

「卸のノウハウと情報力でメーカー、卸店、工事店の新たな関係と、電材卸売市場の次世代プラットホーム実現へ」

 2007年 WEDGE 2月号掲載

ネットワーク化の進展によるメーカーとユーザーの直結で、いわゆる「中抜き」が進みつつある中、さまざまな市場で卸売業の生き残りをかけた模索が続いている。安易な価格競争に陥らないためには、メーカーとユーザーの中間に位置する卸という立場ならではの情報発信が重要だ。電設資材(電材)卸業務ソリューションに特化したインテ・クレッセが、自社ユーザーである東芝電材マーケティングの全面的な協力を得て開発した「IC PREST KII Liteは、電気設備工事店の課題である「効率よい見積の作成と発注」のための情報と仕組みを提供することで、工事店と卸業者のWin-Winの関係を目指す、画期的な試みだ。

価格以外の付加価値として卸ならではの情報発信の仕組み

今回紹介するIC PREST KII Liteの誕生は、インテ・クレッセの主力商品である資材卸売業務支援システム「IC PRESTシリーズ」のユーザーである東芝電材マーケティング株式会社(以下、東芝電材)のアイデアがきっかけだった。「当社のお客様の業務改善による利益の創出を目指し、見積から回収までの一連のプロセスを省力化できる仕組みを考えてもらうのが最初の構想でした」(東芝電材マーケティング株式会社 営業本部販売部IS担当長 半田祐二氏)。電材専門の卸業務を行う東芝電材の顧客は、電気設備工事を実施する工事店だ。一口に電気設備工事といっても、一般住宅向け工事、大規模ビルの電気設備工事、電柱の架設工事など、種類によって扱う資材は異なる。電材という商品は、工事用資材という特性上、商品自体の差別化が難しく、価格競争に陥る傾向がある。「建設業界そのものが縮小気味な昨今、電材市場の大きな伸びも期待できません。従って、コストに対する要求は強くなる一方なのが現状です」(半田氏)。工事店に選ばれる卸業者として生き残るためには、メーカーと工事店の中間というポジションを生かして、価格以外の付加価値を双方に提供することが求められる。「商品を流通させるだけでなく、情報を発信・流通していくための仕組みが必要であると考えました」(半田氏)

卸の持つ商品データベースと連動した効率的な見積を実現

電気工事店の見積作業は、図面を読み取り、必要な資材を洗い出す「拾い出し」という作業から始まる。特徴的なのが、実際に配線を図面上で配置してみて、必要な電線の長さを計算する作業だ。このステップのあと、実際に拾い出した資材を見積書として書き起こし、卸店に発注する。その際の見積は、「電線」「鋼管」などの一般的な名称で作成されており、卸店側ではその仕様に合ったメーカーの商品を選択して納品することになる。「電材は種類が非常に多く、また同じ仕様の商品が複数のメーカーで製造されているので、全てを工事店様で把握することは困難です。この部分のデータを我々の持つ商品データベースと連動することで、効率良い受発注業務の実現を目標としました」(半田氏)。

工事店・卸・メーカーの3社から使いやすいコード体系を構築

インテ・クレッセでは、2004年に電気工事店向け見積システムとして、「IC PREST KIIを発売していたが、今回リリースしたパッケージは、一から新たに構築したという。「拾い出し作業の結果を直接見積データに連動させ、さらに直接仕入先システムとも連携させることで、業務効率を大幅に改善できるシステムを目指しました」(株式会社インテ・クレッセ取締役コンサル事業本部本部長 大湯弘氏)。このシステムの核となるデータベースエンジンに採用されたのが、アイエニウェアのSQL Anywhere Studio (SAS)だ。「SASは、モバイルなどの小さな環境でも軽く動作する、しかもリーズナブルな価格でありながら本格的なデータベースということで以前から利用していました。今回の工事店様向けシステムでは、システム管理担当者がいない環境でもデータベースを意識せず、システムに組み込んで運用できるプラットフォームに最適であると評価し、選定しました」(大湯氏)。2005年4月から3ヶ月をかけて要件定義を行い、8月から1年をかけてシステムの開発を実施した。苦労したのは商品マスターの設計だった。電材関連商品は、業界標準の商品コードが未整備の状況だ。「例えば東芝電材が扱う商品点数は50万点にのぼり、メーカー・卸・工事店様のキーコードを一体化して適切に使いやすいコード化を行うためには、実際に使われる頻度はどの程度かなど、東芝電材の持つ卸業務のノウハウが欠かせませんでした」(大湯氏)。2006年6月から、2店の電気工事店で試験運用を実施し、2006年11月に「IC PREST KII Lite」発売の運びとなった。「モデルケースとして導入いただいた工事店様からは、使いやすいシステムとの評価をいただきました。また、新規導入の引き合いもいくつかいただいており、滑り出しは上々です」(大湯氏)。

卸と工事店をつなぐインフラとして成長していくシステム

今回リリースするパッケージについて、「工事店様と卸をつなぐ最初のツールとしては満足しています」と半田氏は評価する。と同時に、本来目指す情報提供のためのツールとしては、これから発展していくとも語る。「差別化ポイントとして、例えば電材の売れ筋情報、省力化情報やタイムリーな新商品情報など、卸だから提供できるコンテンツを今後充実させたいですね。そのためには、まずはこのパッケージを多くの工事店様に使っていただきたいと思います」(半田氏)。また、機能面では検索機能を充実させたい意向だ。「難しいテーマですが、商品検索やコード変化を効率的に行える人工知能的な検索の実装を模索しています」(大湯氏)。業務としては、図面管理のほか、図面と一緒に提出する工事申請書類の作成と管理までサポートできるように今後拡張を考えている。単なる業務効率化に留まらず、卸と工事店をつなぐ双方向の情報インフラという全く新たなプラットフォーム開発にチャレンジする、東芝電材とインテ・クレッセの今後に注目したい。

 拾い出しから入金処理まで一元処理する積算見積システム

IC PREST KII Liteは、電気設備工事店向けの積算見積システムである。第一の特徴は、従来手作業で行っていた拾い出し作業が、図面をCADデータやスキャナー等で読み込んでマウスでなぞるだけで行えることだ。拾い出しの結果はそのまま明細に転記され、見積作成に活用できるため、従来手作業で行っていた転記作業は不要になる。また、図面データもそのまま電子的に管理できる。第二の特徴は、データベースを活用した見積作成機能である。過去の見積や明細からのコピーだけでなく、各種マスターを利用して見積書の作成の大幅な効率化が図れる。作成した見積書は、必要に応じて指定形式で出力したり、CSVファイルでの出力も可能だ。また、作成した見積書を元に、受注管理、請求管理、入金管理を一括して行うことができるため、業務間で発生する転記ミスなどを未然に防げる。最も大きな特徴は、インテ・クレッセのIC・PRESTⅡを導入した仕入先とのデータ連動である。工事店で作成した見積データに仕入先が型番や単価などのデータを付与して見積書を自動作成するなど、従来電話などで行われていた工事店と仕入先の情報のやりとりがデータで行えるので、見積業務の効率化と精度の向上が期待できる。導入コストは、スタンドアロンタイプで70万円から、クライアント・サーバ方式であれば1台あたり数万円程度での稼動が可能となっており、小~中規模の工事店向けEDIのプラットフォームとして画期的な製品だ。

 


株式会社インテ・クレッセ
東京都品川区西五反田1-24-4
TEL. 03-3779-6022
http://www.intecrece.co.jp

パッケージソリューションメーカーとして1992年に設立。電材業界向けパッケージ「ICシリーズ」は中小~中堅規模工事店向けソリューションとして定評がある。

東芝電材マーケティング株式会社
東京都文京区小石川1-3-21
TEL. 03- 5804-2311
http://www.toshiba.co.jp

照明器具・機器メーカーである東芝ライテックの地域販売子会社を統合し、2004年4月設立。照明・電設資材の電気設備工事店向け卸業務を行う。