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株式会社INAXメンテナンス
「顧客満足度向上の秘訣はカスタマーエンジニアの不満解消スマートフォンで実現する次世代の情報支援」
普段の生活ではあまり意識しないが、オフィスや家庭に欠かせないライフラインの保守サービスは、なくてはならないサービスのひとつだ。そうしたサービスを提供するINAXメンテナンスは、水まわり製品を製造する大手住宅設備メーカーであるINAXの子会社として、高品質なメンテナンスおよびリフォームサービスを提供している。同社のきめ細やかなサービスを支えるのが、カスタマーエンジニア向けのサポートシステム「FORCE」である。NTTドコモのスマートフォンを活用したFORCEは、保守サービス業界でも最先端の業務支援システムとして注目されている
●PDA端末によるシステム化で紙ベースのやりとりを廃止
メーカーのサービス子会社として、日本全国のユーザーに高品質の保守サービスをくまなく提供するには、わかりやすい修理受付窓口の設置と、きめ細かいサービス網の構築が必要だ。INAXメンテナンスでは、全国に4つあるセンターが窓口となって修理依頼を受け付け、各エリアのカスタマーエンジニア(CE)へ直接依頼を伝える。その後は、CEと依頼主であるエンドユーザーや販売店との間で直接連絡をとり、サービスを提供する体制を敷いている。以前はセンターでの受付からCEへのサービス依頼、検収、請求までを、紙の書類で管理していたが、3つの問題点があった。第一に、書類の作成にかかる時間と手間がCEや営業所担当者の負担になっていたことだ。2つめはコストの問題。年間65万件におよぶ保守作業ごとに作成する報告書には3枚複写の専用用紙が使われ、その用紙代だけでも年間約一億円にのぼっていた。さらに、書類には依頼主の住所や氏名などが記載されており、単純なミスから重要な個人情報を漏洩させるリスクもあった。個人情報保護法の施行も控え、対応は急務であった。こうした課題を解決するために、INAXメンテナンスでは、2003年11月から2004年4月にかけて、PDAを端末とするCE支援システム「FORCE(For Customers Engineer)」を導入、紙の伝票や報告書を原則として廃止した。このシステムでは、担当CEの持つ携帯電話にメールで修理依頼が届く。CEは依頼主の住所や連絡先など必要なデータをPDAにダウンロードした後、電話で訪問日を調整。保守作業終了後はモバイルプリンターを使ってその場で確認書を出力する。また、PDAから業務完了報告書を入力してアップロード処理を行うことで、報告書と修理台帳へのデータ転送と、基幹システムの請求書発行のためのデータ入力が完了する仕組みを作り上げた。
●通話と通信機能が一体になった信頼できる業務端末が欲しい
初期のFORCEでは、プラットフォームにマイクロソフトのWindows CEを採用したが、「技術的な面でもベンダーからのサポートを考慮しても、3年後には新しいプラットフォームへの切り替えを検討せざるを得ないという心積もりは最初からしていました」と経営管理本部システム企画部システム推進課課長の難波真司氏は当時を振り返る。また、使っていくうちにハードウェアの問題も出てきた。クライアント端末となるPDAには通信機能がなく、データ通信にはスロットにFOMAカードを装着しなければならない。ところが、SIMカードを認識しないというトラブルが頻発し始めたのだ。「原因は特定できなかったが、カードの接触部を拭いてから装着しなおすと通信できることもありました。保守作業の現場に持ち歩くため、細かい埃などが付着しやすかったのかもしれません」(経営管理本部システム企画部システム推進課 葛谷憲治氏)。また、常に持ち歩く携帯電話に比べて、PDAは置き忘れや紛失のリスクが高くなる。新たなプラットフォームには、システム的にも、ユーザーの個人情報保護の観点からも、携帯電話の機能や使いやすさと業務システムが一体となったクライアント端末が望ましかった。最近の携帯電話は高機能化が進み、旧FORCEシステムと同等の機能は携帯電話端末でも実現は可能だ。しかし、あえてPDAを採用したのは、「大手メーカーの子会社が採用する業務端末として、携帯電話でメールをやりとりするようなインターフェイスでは顧客への信頼感に欠ける」という考え方からだった。
●アイエニウェアの最新技術で短期間でスマートフォンに移行
そうした中で、NTTドコモ東海から提案されたのが、携帯電話とデータ通信端末、そしてWindows Mopbile 5.0にSQL Server Mobile Editionを搭載したスマートフォン「hTcZ」だった。「CEひとりあたり、FOMAと携帯電話の2契約分の基本料金を支払っていたのですから、それを1本化できるというのは非常にありがたい提案でした」(難波氏)。hTCZの採用にあたり、課題となったのがデータベースとの同期だ。提案のあった環境では、旧システムで使用していた受付センターのデータベースと端末のデータベースの同期を制御するミドルウェアが使えなかったのだ。FORCEでは朝の始業時に全国600人のCEが一斉にデータベースにアクセスするため、ミドルウェアはまさに生命線とも言える。しかし、ゼロから開発するには膨大な作業工数が発生する。そこでINAXメンテナンスが選んだのが、アイエニウェアのデータベースパッケージSQL AnywhereのWindows Mobile向けRDMSと、同期技術であるMobile Linkの組み合わせだった。選定の決め手となったのはシームレスな同期機能と、データベースとしての安定性だ。「最初は不安もありましたが、使い始めてみるとパフォーマンスが以前の環境に比べて圧倒的に良いことに驚きました」(葛谷氏)。データベースのテーブル構成やユーザーインターフェイスは前システムをほぼ踏襲し、プラットフォームだけをリプレースしたが、わずか1人月程度の工数で開発を完了し、2007年4月から全国のCEに新端末の配布を開始した。
●お客様との「一期一会」に満足を提供するシステム
新プラットフォームの選定時に考慮したもう一つのポイントは、システムをできるだけ内製化することだった。「お客様との接点でシステム化できることはたくさんあります。自由度の高いモバイル環境の特長を活かすには、容易に陳腐化しないデータベースと、使いやすい開発環境が欲しかったのです」(難波氏)。サポートセンター業務の経験を持つ難波氏のアイデアを、葛谷氏をはじめとする5人のスタッフが形にしていく体制で、FORCEは新たな機能を次々と取り入れている。「Mobile Linkの同期機能を活用して、将来的にはクレジットカード決済やQRコードによる携帯決済などにも取り組んでいきたいと思っています」(難波氏)。FORCE導入で、紙の伝票をほぼ廃止した結果、用紙代を削減できたほか、報告書作成にかかる時間は1件あたり平均15分から3分半へと飛躍的に短縮され、個人情報漏洩のリスクも回避できた。また、修理依頼受付から平均2日以内で作業を完了できるようになり、「顧客満足度の向上にも大きく貢献しました」と難波氏は語る。「CEはお客様とINAX接点であり、保守サービスは一期一会の機会でもあります。そこで最高のサービスを提供するために、新しいFORCEを役立ててもらいたいと思っています」(難波氏)。この思いをCEに伝えるために、難波氏は3ヶ月をかけて全国の拠点を訪問している。「前回のシステム導入時には管理強化につながるという反発もありましたが、今回は『待っていました』と言ってもらえるのが本当に嬉しい」と難波氏は語る。CS(顧客満足度)向上には、まずはCEが気持ち良く働けるシステム環境整備が大切だ。そのために欠かせないFORCEの進化を、アイエニウェアのSQL Anywhereが支えている。
A6サイズプリンターの採用で請求書即時発行にも対応
「hTc Z」を使った新FORCEの最大の特徴は、特別な操作なしで端末とサーバーのデータベース同期を実現した点だ。修理依頼は各担当者の端末にメールで届くが、同時にトリガーとなるシステムメッセージが端末に送信され、必要な訪問先データにダウンロードされる。作業終了後は、端末から作業完了報告を入力するだけでデータベースの同期が再度行われ、そのデータに基づいて必要な書類が自動作成される。入力もタッチパネルだけではなく手書きOCRやキーボードを併用できるため、CEからは使いやすいと好評だ。また、その場でコンビニ支払い用の請求書が印刷・発行できるのも新システムのもう一つの特徴だ。ブラザー工業株式会社のA6サイズ感熱紙プリンターの開発に協力する形で自社要件を伝え、専用用紙と共に発売と同時に採用した。修理依頼主はサービスを受けた後すぐに決済でき、またINAXメンテナンスにとっても入金が早くなるという、両者にとって大きなメリットがある。Mobile Linkがデータベースのシームレスな同期を可能としたことで、請求書の採番がリアルタイムに行えるようになり、実現した機能だ。INAXメンテナンスでは、このシステムをベースに今後も精力的に改良を重ねていく予定だ。
株式会社INAXメンテナンス
代表取締役 亀山春雄
〒479-0838
愛知県常滑市鯉江本町5-1
TEL.0562-31-0620(代)
http://www.i-mate.co.jp
大手住宅設備メーカーINAXの100%子会社として、水まわりを中心としたINAX製品の保守・リフォームサービスを提供する。全国52のサービスセンターと600人のエンジニアを擁するネットワークを駆使して提供される365日対応の迅速・高品質なサービスは、エンドユーザーだけでなくINAX製品の販売代理店や住宅メーカーからも高い評価を得ている。